原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。(byドミトロ・ティムチュック)
5月19日の分はこちら。
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を、要約し一部解説を加えたものです。※
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■ 悪かったこと ■
(1) ルガンスク・ドネツク州では11か所の選挙区投票委員会事務所が占拠され、更に8か所の選挙区投票委員会事務所が今後占拠される恐れがある。
ウクライナの法律では、ドンバスの一部の投票所が機能しなかったとしても選挙の結果は認められるが、犯罪者のために一般市民が自由な選択権を奪われるのはいただけない。
治安機関が各地の投票所・委員会の活動を可能にしてくれることを祈る。国家は、国民の憲法的権利を保障してこそ国家なのだから。
(2) 地域党と共産党が、投票者の買収を刑事犯罪にする法案議決を不可能にした。この法案では、投票者の買収を行う者には3年未満の自由制限が課せられるはずだった。
地域党と共産党は案の定、刑罰と聞くと素直に「イエス」とは言えないわけである。公正な政治には向かないのだろうか。この二つの党、どうにかしなければならない。
※ 詳細を説明すると、当日450名の議員のうち305名しか出席しなかった上に(議決に必要なのは大多数の226名)、そのうち193名が賛成、111名は投票を拒否、1名は投票放棄した。111名「不投票者」のうち、地域党48名(投票放棄1名、欠席54名)、共産党13名(欠席19名)計61名と大多数を占め、二党とも出席者全員が「賛成」しなかった。しかし、他の党や無所属議員の中にも欠席者・不投票者がいたので、「全部が地域党、共産党のせいだ」とは言えない。
当法案は他にも、買収される投票者に罰金や自由制限を、投票箱・投票管理委員会の議事録を盗む者には5~7年間の自由制限を課すなど、買収される側や投票の正当な管理を妨げる側にも刑事責任を問うものだった。
(3) ウクライナの大統領選挙の前日・当日に予定されているロシア軍の演習「Aviadarts-2014」は予定通り実行される模様。ウクライナはロシアに、48時間以内にその趣旨を説明するように求めている。
納得するような説明が聞けるなどと期待してはいない。予定されている演習の内容は、大型兵器による目標のミサイル攻撃・爆撃・砲撃、また想定敵の対空防衛システム阻止の訓練で、ウクライナへの軍事介入が行われる際の想定シナリオに激似しているにもかかわらずである。
また、国境付近からロシア軍が撤退する様子も見られない。10キロ圏内にはいないだけでも若干緊張が弱まるが、安心するには早い。状況解決のためには、元の配属地へ撤退してもらわなければならない。
■ 良かったこと ■
(1) ウクライナ最高議会が、「平和と合意のメモランダム」を採決した。内容は、国内危機の段階的縮小を呼び掛け、ジュネーブ会合合意を完全支持し、そして憲法改革を約束している。
この文書は声明にすぎない。しかし、本物の対話に向けた大切な一歩であると考える。武装集団との対話ではなく、東部や南部の住民、何らかの理由で中央政府を信頼できないが統一され安定しているウクライナを望む国民との対話である。
(2) 世界中から10万人の人が、アメリカ政府に向けられた「ロシアをテロ支援国と認める」請願に著名した。これでホワイトハウスがこの請願を検討しなければならなくなった。
事実上その体勢を取っているロシアが欧米、そして全世界からテロ支援国として正式に認められたら、ウクライナの大きな勝ちとなる。
(3) ドンバスの資産家リナット・アフメトフが長い沈黙の末、ようやく統一したウクライナを支持した。ドネツク・ルガンスク州では、アフメトフ氏の呼びかけに応えて、大企業の従業員が暴力や地方の分離に反対するストライキを行った。
先日、テロ組織の「ドネツク人民共和国」との「合意」を批判したばかりだが(5月16日、「良かったこと」の(1))、反省されているようで実に喜ばしい。
アフメトフの行動にはあらゆる原因が考えられる。その一つは、そのビジネスの一部がヨーロッパに位置しEUとの関係に頼っていることだろう。
それと同時に、アフメトフがロシアを公に批判することも応援することもなく裏で思い悩んでいる間、二言なく一致したウクライナのために力を注いできたドニプロペトロウシク州知事コロモイスキー資産家の影響が少しずつアフメトフの地元ドンバスに広がり始めた。ウクライナ一の資産家として、その縄張りを譲るわけにはいかない。
もう一つの理由としては、親ロシア武装集団が牛耳る無政府状態よりも、一部の財産を失っても合法的な政権がよいと、アフメトフが考えた可能性がある。「ドネツク人民共和国」が最近、アフメトフの企業を「国有化」すると言いだしたことも貢献しているだろう。
そしてもちろん、アフメトフが「こっちにもそっちにも」と、二役を演じようとしている可能性も捨てきれない。
しかしそれは問題ではない。動機がどうであれ、アフメトフのこの「策略」がドンバスの安定化に貢献するのであれば、歓迎するばかりである。アフメトフ氏の真の動機や隠れ野心は、物事が落ち着いてから考えることとしよう。
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リナット・アフメトフはドンバスを拠点とした資産家である。最近はウクライナの国民総生産の25%ほどになっているとも言われ、前大統領ヤヌコヴィッチをサポートしていた。ドンバスでは多くの企業を持っており、過去に暴力団に繋がっていたとも言われ、警察や自治体への影響が最大である。
上記「呼びかけ」とは、19日公式ホームページで掲載され、また放送中の映画を遮ってまで放送されたスピーチのことである。厳密にいえば、「統一したウクライナ」を呼び掛けているわけではなく、「ドネツク人民共和国」によるテロや脅迫に対抗するように呼びかけているが、今まではその立場を明確にしてこなかったために「アフメトフが一言命令すれば、ドンバスの警察が武装集団に抵抗せずやすやすと各施設を手放すことがなかっただろうに」と言われてきたこともあり、19日の呼びかけは「親ウクライナ的」と捉えられる。
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「情報レジスト」のアーカイブ(4月2日~17日)はこちら。(Архив переводов ИС со 2-го апреля)
「ウクライナ情勢ーーよくある質問(ウクライナ人の視点で)」はこちら。(Мини-ликбез)
在日ウクライナ大使館、報道センター(声明およびコメント)HPはこちら。(Прес-центр посольства України в Японії)
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