原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。
7月2日の分はこちら。
和文: O.P.
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を和訳したものである。※ ======================================
■ 悪かったこと ■
(1) [※背景は、下記コメントをご参照※] 治安部隊は、スタヌィツャ・ルハンスカ村がウクライナ軍により空襲されたとの主張を否定している。国家安全保障・国防会議では、悲劇をもたらした攻撃の犯人はテロリストらであり、使われた武器は[航空戦闘機ではなく]グラード多連装ロケットランチャーであるとしている(証拠には砲撃に使われた火薬の鑑定結果を使用)。なお、そのグラード・ランチャーは既に、反テロ作戦軍により捕えられているという。
問題なのは、ドンバスを含め大勢の人がクレムリンのおとぎ話を信じてしまっていることにある。したがって、物事をはっきりさせなければならない。徹底的な捜査を行い、捜査にはOSCEをはじめ国際組織に関わってもらうこと。ありったけの証拠を国連に提供すること。
いつまでも言い訳を繰り返すばかりではいけない。世界に、テロリストらの正体、その背後に満足そうにしているプーチンの素顔を曝け出さなくてはいけないのである。
※スタヌィツャ・ルハンスカ町式村――ルハンスク市から25キロほど離れた、人口1万5千人弱の町である。7月2日、ウクライナ時間午前11時ごろ襲撃が起こり、数10軒の家屋、3本の通りが全焼、ガスパイプが破壊され、一般市民から14名~26名の死者が出た。
目撃者によると、11時ごろはっきりと航空機の音が聞こえ、その直後に爆発音が聞こえた。現場に素早く駆けつけたロシアの記者は、「ウクライナ軍による空襲だ」と確言。しかし、「航空機を見た」という証言もなければ、襲撃の動画もないため空襲だったとは言い切れない。また、ロシアの記者が複数真っ先に現場に賭けつけられたことも(最初にネット上に上がった動画はロシア・サラトフ放送局のキャスタによるものだった)、予めそうなることを知っていたことを示唆している。
一方で、国家安全保障・国防会議の情報では、同日ルハンスク市近郊のメタリスト村における衝突の結果、テロリストらがグラード多連装ロケットランチャーを用い反テロ作戦軍を砲撃する際、スタヌィツャ・ルハンスカに向けても発砲したとしている。また、火薬鑑定の結果では、スタヌィツャで発見されたのは空対地ミサイルではなく、グラード用ミサイルだったという。とはいえ、これでは目撃者の「航空機の音を聞いた」という証言の説明は付かない。
7月1日、テロリストらがルハンスクの上空を守る地対空防衛陣地を破壊させているが、ネットでは「ロシア、あるいはクリミアからの航空機を検知されずに送り込み、ロシアTV向けに演出したのでは」との説も上がっているが、地対空防衛陣地は他にもあるということで、現実性が低いと考えられる。
以上、Podrobnosti.uaの分析に基づく。※
写真:© RIA Novosti / Valery Melnikov
(2) ドンバスにおける戒厳令が布かれることはなさそうである。政治的な理由を考えると、「悪かったこと」の中に入れるべきでないのかもしれない[※領土の一部でも戒厳令が布かれた場合、ウクライナが控えている議会の再選挙ができなくなること、など※]。しかし、戒厳令をなくしては、既に解放された領地を効果的に統治する方法は見えないのである。
仲間になったそばから敵に寝返る現地の行政機関は、信頼ならない。ましてや、[今までの振舞いからすれば]地元の警察を頼るのも、愚かなことだろう。そこで、解放された領地において戒厳令を布くことが筋の通ったやり方である。そうすれば、現地行政機関の権限は限られ、治安は軍事守衛が担い、テロの再発の防止になるのである。
戒厳令を採用しないが類似した結果を狙える方法が提供されれば、それに越したことはない。しかし、現状では納得がいかないのである。
(3) 国防省では、テロリストらに捕えられたウクライナ軍所属者の解放に向けた作業部会が発足した。これは良いことである。
良くないのは、未だすべての捕虜・人質問題に取り組む統一した国家組織が出来ていないことである。各局はその管轄下の者のみを世話し、民間人の人質は全局が――つまりは、どこも取り扱っていない。
安保・国防会議などに所属した統一した組織は、とっくの昔に作るべきであった。捕虜の解放が大きく、切実な問題であるにもかかわらず、なぜ未実現のままなのかは、不明である。
■ 良かったこと ■
(1) 国家安全保障・国防会議のブリーフィング中、熱い議論が起きた。同席した記者らが、反テロ作戦軍によるドンバス市町村の解放がこのまま1日に4つの市町村のペースで続いたら、作戦が終わることがないのでは、と指摘した。
それに対し、情報分析センターのA.リシェンコ報道官は、解放作戦は、武装集団の幹部がある、または武装集団が集結している市町村を中心に行われていると冷静に答えた。
確かに、現在武装集団の管理下にあると思われる領地を、占拠し続けるだけの体力と武力はテロリストらにはない。そのため現在、反テロ作戦軍は主たる集団を中心に攻撃し、また武装集団の配給ルートを断つことに専念している。そういった意味では、テロリストらで賑わう一つの村を解放した方が、形だけの武装集団がいる市町村の10か所を抑えるよりも、よほど大事なことである。

Drawings and letters of children sent to the ATO zone – a universal phenomenon in the camps of soldiers. As they head out to their daily missions, the soldiers pass by these makeshift stands. They say – it’s inspiring (photo – Yuri Kasyanov)
子どもが反とロ作戦地帯に送る絵や手紙――軍のキャンプでは良く見られる光景。
日ごとのミッションに出かけると、このような「展示会」を通ることになるが、
それが非常に励まされるらしい。(写真:Yuri Kasyanov)
(2) 昨夜、ドンバスからロシアに逃亡しようとした300人のテロリストらは、ロシア国境警備隊により射撃され[引き返すことになっ]た。
プーチンは相変わらずマルチプレーしようとしている。この仕打ちは、テロリストらに「ロシアに引き返すことはできない」「ウクライナの領土で最後まで戦っていただく」というメッセージを送ると同時に、「国境をきちんと防衛しているのだ」と、国際社会に向けた演出にもなる。(とはいえ、ウクライナに侵入者を通すとなるとその防衛が全く効かず、一方的なものであることについては言及がないのだが。)
いずれにせよ、ロシアの義勇兵やドンバスにいるその親ロシア仲間にとっては、プーチンが守ってはくれないことを物語るエピソードである。ここで、わけもわからず死ぬか、武器を捨てて命を拾うか、この二つしかないのである。
(3) 最高議会は、大統領が出した憲法改訂案を検討している。ポロシェンコ大統領自身はその改訂を、「連邦制に対する解毒剤」と呼んでいる。
改訂の内容はもはや知られている。単一国家という形態を保ちながら地方分権を実施し、またロシア語をはじめ他の言語の地域公用語化を可能にするなど、誰もが納得するだろう妥協である。
どのように実現するかは、改訂が議会で話し合われていく過程も含め、様子を見る必要がある。しかしどうであれ、これは本物の平和的対話の始まりである。そして相手はテロリストらではなくウクライナの東部、である。
[※以下「追伸」と、軍事経験のない国防相が新たに任命されたことに対するコメントがあるが、ウクライナ内政に関わるネット上の議論が背景にあるため、勝手ながら割愛させていただく。※]
(原文: ドミトロ・ティムチュック)
Pingback: 【情報レジスト・ティムチュック】 7月4日(金)のまとめ | Voices of Ukraine