原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。
6月27日の分はこちら。
和文: O.P.
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を和訳したものである。※ ======================================
■ 悪かったこと ■
(1) 国家安全保障・国防会議の本日の報告によると、反テロ作戦の開始以来、ウクライナでは200人の軍人が死亡、619人負傷している。国防省の情報では、テロリストらは29名の軍人を監禁している。
また、一般市民も命を落としている。ドネツク州行政機関は、テロリストらがその活動を開始してからドネツク州だけで160以上の民間人が死亡していることを明らかにした。
この紛争を煽っており、その国民の命をぞんざいに扱うことに慣れているロシアにとっては、この数値は大したものではないのかもしれない。しかしウクライナにとっては、この紛争が奪った軍人や民間人一人ひとりの命は、大きな悲劇である。
(2) 本日、「イズヴァリノ」検問所近郊で、治安部隊の歩兵戦闘車が地雷に当たり爆破。同日、この検問所は親ロシア武装集団から砲撃された。
とても典型的な出来事である。武装集団は、ロシア国境へのアクセスを断たされ孤立させられるのを、そう簡単には許さないだろう。彼らはよくわかっている。ロシアの義勇兵や武器の流入口が塞がってしまえば、ドンバスにおけるテロリズムも終わりを迎えるということを。
「情報レジスト」の情報では、武装集団が活発な地域で国境警備隊や軍隊が国境の警備を復活させると、武装集団はすかさず治安部隊の陣地に地雷を仕掛け始め、砲撃もする。どうやら、国境を巡る戦争は、これからが本番のようである。
(3) きのう(7月1日)「ルハンスク人民共和国」のテロリストらが女性記者のA.スタンコと、HromadskeTVのカメラマン、I.ベスコロヴァイヌィーを捕えた。
(※HromadskeTV=「市民テレビ」、反ヤヌコヴィッチ政権抗議時に政権側に付いたマスコミに対抗する試みとして、2013年11月~2014年2月の間出来上がった放送局である。当初はインターネットで公開されていたが、政権崩壊後に第一国営放送局「ペルシー」にて一日数時間の枠を与えられるようになった。※)
情報戦を描く一コマと言っていいだろう。親ロシア武装集団(そしてクレムリンにいるその飼い主)からすれば、ウクライナに違法入国するロシアのプロパガンダ・マスコミは自由にドンバスを行き来する権利を持つのに対し、背後に誰も付いていないウクライナの市民マスコミにはその権利は与えられないよう。ドンバスから一言も真実を伝えさせない、これがクレムリンとその手先の座右の銘であろう。
国家安全保障・国防会議では、記者もカメラマンも生きており、解放に向けて交渉がなされていることを明らかにした。神の御恵みで、早く解放されますように。真実で危険、そして非常に必要なその務めを心から感謝したい。
■ 良かったこと ■
(1) 反テロ作戦の活動期は続いており、また成功をも収めている。治安部隊に長い間期待してきたことが、ようやく実現しつつある。きのう(1日)だけでも、120か所のテロリストらの陣地を攻撃し損害を加えられた――徹底的に偵察をし、そこに一般市民がいないことを確認した上でのことである。
高官僚の間では、再び停戦が宣言される可能性が話し合われている。それについて何かコメントをするのは、簡単なことではない。読者の中には、平和的対話による解決にまだ期待を置く方も少なくなければ、テロリストらは妥協することなく無害にし排除すべきであり「平和的対話」などは「元が取れない」と確信している方も多いように思う。
正直に言うと、自分のこころは後者を取りたがる。しかし頭では、停戦という選択肢も捨てきれないことを理解してはいる。ただし、前回のような、武装集団が邪魔されずに今後の対抗に備えドンバスで血の祭りを繰り返しただけのものであってはならない。
武装集団に武器を捨てるきっかけとしての停戦しか、あり得ないのである。
(2) 戦勝するには、全ての分野において勝利をおさめなくてはいけない。ロシアの侵略初日からウクライナが惨敗してきた「情報戦」も、その中に含まれる。
問題ないとはとても言えないが、状況が改善しつつある。改善の一歩となったのは、国家安全保障・国防会議のスポークスマンが、A.リシェンコ大佐に変わったことである。社会に向けられた効果的な情報提供システムが稼働しようとしている。「情報レジスト」も訴えてきたように、ウクライナが侵略の犠牲者であるからには、客観的な情報を素早く発信することが最善の反プロパガンダになる。クレムリンの強力なプロパガンダ・マシンに勝てる手段はそれしかないのである。
因みに、A.リシェンコ大佐の登場はかなりの「好手」である。筆者自身はリシェンコ大佐を前から知っているが、国防省の報道局で長年素晴らしい仕事をし、平和維持軍勤務も経験している。一言で描写するならば、「プロ」である。また、国家軍隊の行動を解説するのは軍人になることも頷ける。
「情報レジスト」も、活動の形態を変えようとしている。今は、国家組織との新たな協力体制を試行中である。我々は国家組織に対抗するものではなく、有志の者による社会的機構であり、自国が困難に直面しているところを助けようと動いているものである。そのため、国家組織と同じことをしようとはせず、助けが必要な箇所を補う形で動いていく。
(3) 国家安全保障・国防会議の情報分析センターによると、ロシアの各国営放送局や国営情報局による反ウクライナ発言は、ウクライナ大統領が決まってから顕著に緩和した。
そうかもしれない。ロシアが強力な対ウクライナ情報戦を終えるとは、無論、到底言えないが、いずれにしても、これは良いことである。
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