原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。
6月17日の分はこちら。
和文: S.J.
解説: O.P.
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を和訳したものである。※ ======================================
■ 悪かったこと ■
(1) ルハンスク近郊で「アイダル」大隊が待ち伏せ攻撃に遭い、犠牲者が発生した。応戦に駆け付けた反テロ作戦軍部隊もまた大きな犠牲を出した。
亡くなった英雄たちには哀悼の意を表したい。
兵士の話によれば、この悲劇は「アイダル」大隊と反テロ作戦軍の行動が調整されていなかったために起きた由である。自分は、如何なる作戦であれ、命令系統 は1つに統一されるべきとの考えには全く賛成である。しかし、自分は次のコメントを寄せた友人の1人にも賛成する ―「同じく志願兵から編成される『アゾ フ』大隊がマリウポリを解放した際には、これが反テロ作戦軍の戦功として発表された。しかし、『アイダル』大隊の悲劇は、志願兵たちの読みが甘かったため に起きた悲劇だと報道されている」。
自分には何が真実なのか判断することは難しい。しかし、反テロ作戦軍が成果をあげ、決断力を見せていれば、志願兵たちも同じ指令系統の命令に喜んで従っていたであろう。自分達だけで動こうとはしなかったはずである。
(2) 「武装勢力が行う誘拐、拘束、暴力、拷問及び殺人は、今や、以前よりも多くの住民グループに対して行われるようになった」。これは、本日発表されたウクライナ情勢に関する国連報告の引用である。
このような国連による判断は、一般のウクライナ人にとっては、以前は遠いアフリカ諸国のイメージと結びつくものであった。今やルガンダとドンバブエ、では なく、血なまぐさい「ルハンスク人民共和国」及び「ドネツク人民共和国」は、悲しいことに、ウクライナの現実となってしまった。プーチンとウクライナのま ぬけどものせいである。
(3) 本日、我々は、ドンバスでテロリストに占拠され、ロシアのプロパガンダ放送を垂れ流している6つのテレビ塔(テレビ・ラジオ放送局)が何故未だに稼働を続けているのかという疑問の回答を探した。
そして様々な出来事の嵐が起きた。ラジオ放送・ラジオ通信・テレビ放送コンツェルンでは経営陣のポストを巡る争いが起きていることが分かった。但し、我々 が関心を持っているのは、何故このコンツェルンが敵の味方をしているのか、なのであるから、この争いの詳細には立ち入らないことにした。
その結果、労働組合と経営陣が考えを述べた。別の情報源にもアクセスした。その結果得られた結論としては、現場ではテロリストとの協力が全力で進められて いるということである。しかし、現場の人間を責めることは出来ない。というのも、「協力」というのは、機関銃で脅されて行われているためである。従業員の 一部がロシアのテレビ放送を停止させようと試みたことも何度かあったが、これには武装勢力が武力を使用して対応していたことも判明した。
我々は批判したいのではなく、中立の立場の専門家が我々に自信たっぷりに語ったところによれば、このテレビ塔を遮断することは技術的に可能であるということを問題にしたいのである。何故それが出来ていないのかが我々の今後の調査テーマである。
特殊通信に関しては、特殊機関の評価を待ちたい。
コンツェルンで起きていることの纏めとして、次のとおり事実を述べよう:ウクライナでは事実上戦争が起きているにも関わらず、ポストの分配に明け暮れる者がいるのである。これは、控え目に言っても、間違ったことである。
『アイダル』大隊(写真はhromadske.tvによる)
■ 良かったこと ■
(1) ポロシェンコ大統領は、反テロ作戦に参加していた、また今後参加する軍人には、戦闘参加者のステータスが付与されると発表した。
つい昨日、我々は同じことを国防省の人間から聞いた。反テロ作戦地域ではどんな兵士も必ず戦闘参加者のステータスが与えられるようなメカニズムを創るとのことである。たとえ部隊が戦闘ゾーン外に移動するにしても、与えられるとのことである。
自分は、このメカニズムが問題なく作動するかどうかについては、かなり疑わしいと考えている。従って、軍の側から詳しく発表すべきであるし、そのメカニズムに対する法的評価も公の場でなされるべきであろう。
いずれにせよ、各人が働きに応じて認められるという大統領の言葉を信じたい。英雄たちを公平に扱わないことは、不公平中の不公平であるのだから。
(2) 本日、国家安全保障・国防会議は、ウクライナ軍が最新の3E1モデルと4Eモデルの装甲車の比較実験を行い、良い方の装甲車を選ぶと発表した。合計約1,000台の購入が予定されている。
軍装備・兵器の更新をウクライナ軍は長い事待ち望んでいた。しかも、この装甲車は反テロ作戦地帯においては今すぐにでも必要なものである。
さらにウクライナの国防産業へ大口の発注をすることとなるから、これは余計に素晴らしいことである。問題は、必要な予算を国が確保できるかである。これは難題である…。
(3) コーヴァリ国防相代行は、ウクライナ軍には遂に特殊作戦軍が創設されると発表した。
ドンバス情勢に鑑みれば、特殊作戦軍を創設する必要性は誰も疑問に思わないであろう。
ところで、ウクライナ特殊作戦軍の「生みの親」(このアイディアはヤヌコーヴィチ前大統領時代に葬られてしまったが)であり、前国防省特殊作戦部隊局長 は、今や我々の軍事政策研究センターで専門家として働いている。従って、我々はこのテーマを非常に注意深く見守っていくこととする。
(4) 最高会議では、デシチツァ外相代行の更迭を支持しない政治勢力が出て来た(全ウクライナ連合「スヴォボーダ」のこと)。
自分には、デシチツァ外相代行の行為の何が悪いかがさっぱり理解できない。外相代行が勤務時間外に友人と一緒によく知られた歌の一部を唄ったのがいけない というのか?しかし、この行為によって、外相代行はロシアの在外公館に対する抗議活動がより過激化するのを防いだということも忘れてはならない(ラヴロフ の部下たちはそうなって然るべきであるが、外交は外交である)。
ましてや、クレムリンは、結局、プーチンがチ○ポ野郎であるという事実を公式には否定していない。それに中立の立場にある専門家による鑑定にあたるような、然るべき証拠も示していない。
そもそもこの件は全くの笑止千万である。チ○ポ野郎なのはプーチンであるのに、罰せられるのはデシチツァ外相代行なのである。全くの矛盾である。
※ 「ち○ぽ野郎」について (作成: O.P.)
日本語にすると強烈に見える表現だが、これには3カ月前に始まった背景がある。

New York City
3月末、ハリコフ市のサッカーファンが、サッカー試合を前に「プーチン・フイロー!(Путин – хуйло!) ララララララララァ!」というチャントを叫びハリコフの通り進んでいる動画がネットに掲載された。
「フイロー」というのは、凄まじい造語能力を持つ俗語の「フイ」(日本語では「ち○ぽ」などに当たる)と文法上の中性を表す接尾辞「ロー」からなる言葉であり、「卑怯者」「最低人間」と言った意味に「中性」という、人間に対して使う場合は「人間ではない下位動物」「思考力を持たない」「軽蔑すべき存在」などを表す意味が加わった表現である。
当時はクリミアが占拠されて2週間もたっておらず、またウクライナ東部では親ロシア運動が勢いを増しており、反ウクライナ・プロパガンダが旺盛だった。国境へのロシア軍集結も見られていた。そういった状況の中で、ハリコフ市という、ウクライナ東部に位置し、常に親ロシアな雰囲気が漂う町の若者が、それもロシア語で歌ったことには、大きな意味があった。ウクライナを愛する者の、若干口調の粗い心の叫びと言っても良いだろう。
それ以来、「フイロー」の汚らしさは薄れ、プーチンと言えば「フイロー」、「フイロー」と言えばプーチン、という意識がウクライナ中に広がった。
これが大きな人気を得た。他にも盛大バージョン、ロックバージョンなどと次々とファンアートが相次ぎ、最近は日本でも歌われている動画がYouTubeに上がった。
本題に戻るが、去る週末、ウクライナ軍を乗せた輸送機が親ロシア派武装勢力に撃墜されたことを受け、ロシア大使館前にデモが集まり窓を割るなど暴走が起きた。そこに現れたデシチツァ外務相代行がデモ隊を宥める映像話題になったが、デシチツァ外務相は「気持ちはわかりますが、こんなことをして何になるんでしょうか。大使館を攻撃してはいけないのです」と言い、気持ちがわかる証拠としてつい「プーチン・フイロー」と発言。群衆はそれを喜び、一斉に「ララララララララー」と歌いだし、場の雰囲気が和んだ(動画)。
結果として、外交官に相応しくないということで、6月19日、外務相職を退けることとなった。※
(原文: ドミトロ・ティムチュック)
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