原文はこちら。(byドミトロ・ティムチュック)
5月13日の分はこちら。
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を、要約し一部解説を加えたものです。※
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■ 悪かったこと ■
(1) 14日にはウクライナの統一に向けた最初の「円卓会談」が開かれたが、そこも茶番から始まった。
議会の地域党会派長エフレモフ議員が、反テロ作戦を行う暫定政権に「責任を負う日が来る」と脅し始めた。なんでも、東部のテロリストにはそれなりの「ビジョン」があり、土地が歴史的にロシアだったロシアじゃなかったという「歴史的真実」を気にかけているとか。そこでロシア国旗を掲げた集団強盗行為に応えようとした政府は懲罰者で人の屑ではないか、と。
エフレモフ議員が訴えたテロリストの「真実」とは、人を殺し、拉致して拷問を加え、強盗し暴利をむさぼる権利だろうか。同じことをしてきたリーダのヤヌコヴィッチ前大統領からして、とても地域党らしい「真実」である。
何度でも言うが、東部との対話とテロリストとの対話とは別物である。いくら暫定政権を批判しようと、反テロ作戦は一般市民を狙ってはいない。その狙いはテロの阻止である。なので、エフレモフ議員をはじめ、ウクライナ治安機関に対する「人殺し」類の批判は不適切であり挑発行為でしかない。
(2) ドンバスの分離独立主義者は、各地の選挙管理委員会員とその家族を脅している。ルガンスク州のアントラツィット市では、地域選挙管理委員会事務所が占拠された。目的は明らかである――5月25日の大統領選挙の中止。
選挙日が近づくにつれて、問題も増えそうであるが、乗り越えることを信じている。欧州安全保障協力機構も、25日の大統領選が正直に、透明で、外部からの干渉なく行われるように協力することを約束してくれた。
(3) 13日(火)、自称ルガンスク州知事ボロトフがロシアに出向いた。トルチノフ大統領代行が、ルガンスク州のセパラティストのリーダがなぜ自由に国境を越えられたのかと、国境防衛庁に説明を求めた。
答えには呆れた。ボロトフは出国禁止人物リストには入っていないのだから、出国を禁じる根拠はなかったとのこと。
泣くべきか笑うべきか。形式主義がはびこる我が国ではいかにも起こりそうなことではあるが、この上なくばかばかしい状況には変わりない。
(4) ウクライナ法務省の分析によると、クリミア占拠によるウクライナの損額は1兆フリブニャ(約8.5兆円)以上である。
それも、これから増えるばかりである。今後ロシアは、黒海の陸棚からウクライナのガス発掘を始める予定らしい。プーチンのクリミア大作戦は、ウクライナにとって非常に高くつく出来事となる。
■ 良かったこと ■
(1) 全ウクライナの統一に向けた円卓会談に話が戻るが、せめての対話が始まったのは良いことである。
正直に言わせていただくと、筆者はあまり期待してはいない。理由は簡単で、今の東部には対話ができそうで、東部住民が信頼を置くリーダなどいないのである。筆者の誤解であることを祈る。
しかし、ウクライナ政府が東部に耳を傾け、東部にも聞いてもらうためのきっかけを探していることは、何といってもよいことである。
(2) ウクライナ空軍に所属する5つの地対空ミサイル支隊が回復した。
ウクライナのような広い国にとっては非常に少ない数であるが、現状を考慮しなければならない。「だいたい」の数値すら公表できないのだが、結論から言えば、ウクライナの対空防衛は悲惨な状況。どんな小さな改善でも大きな意味を持つのである。
(3) ブリュッセルのとある自治体が、ウクライナ危機を理由に、例年の「ロシアとのランデヴー」フェスティバル開催を中止した。
欧米では「ロシア」がますます侵略や悪と結び付けられ、「ウクライナ」という言葉はますます自由と主権のための戦いを意味するようになっている。妥当な意味合いである。
(4) ウクライナ国民衛兵員M.ガイ隊員と第95航空機動部隊S.シェフチュック隊員は、スラビャンスク市(ドネツク州)の最高地点、カラチュン山にあるテレビ塔の上にウクライナ国旗を挙げた。
スラビャンスク市でテロリストが心地よさそうにしているところを見ると、この国旗はあまり意味をなさない。しかし同時に、ここは我らの土地であると物語る象徴として、大きな意味をなしている。外国の工作員や地元の対敵協力者の手で流された、仲間の血に染まっている土地だ。そのために、戦い続けるのだ。

Myroslav Gai and Serhiy Shevchuk with the Ukrainian flag atop the Slovyansk TV tower (photo by M. Gai)
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「情報レジスト」のアーカイブ(4月2日~17日)はこちら。(Архив переводов ИС со 2-го апреля)
「ウクライナ情勢ーーよくある質問(ウクライナ人の視点で)」はこちら。(Мини-ликбез)
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