原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。
5月28日の分はこちら。
和文:O.P. (意訳重視)
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を和訳したものである。※
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■悪かったこと■
(1) スラビャンスク付近で反テロ作戦側のヘリコプターMI-8が撃墜され、国民衛兵(内務省軍)6名、そして特殊部隊ベルクット[イヌワシ]隊員6名が死亡した。同日、ハリコフ州イジューム市近辺で反テロ作戦の車両縦列が射撃を受け、1名が命を落とした。
ヘリコプターを墜落させたテロリスト集団はその場でせん滅。一方で、車両縦列を攻撃したテロリストらは逃亡に成功。
ドンバスのテロ集団に属する一人ひとりに、その犯罪の報いが必ず来る。そしてウクライナの土地が死や復讐の土地ではなくなる日も、そう遠くはない。筆者は、そう信じている。
(2) ロシアは事実上、テロを支援していることを認めた。
具体的には、(ウクライナ検察総局の定義で「テロ組織」に当たる)「ドネツク人民共和国」に対して支援物資を送る予定について質問されたところ、プーチン大統領の報道官D.ペスコフは「支援物資は必ず送る。軍事支援に関しては何とも言えない」と答えた。
コメントのしようがない。テロリストを公式に支援するのは、いかにもクレムリンらしい。そして軍事支援について「何とも言えない」ペスコフ書記がご謙遜をなさっては困る。ロシアがどのように、そしてどれくらいの軍事支援をドンバスに送り込んでいるのかは、ウクライナでよく知られているのである。
(3) ドネツク州行政保健部によると、5月9日から28日までの間だけで、7人の子どもがドネツク州で戦闘に巻き込まれ軽重傷を負っている。
子どもの涙を招く行いは、人がなしうる悪行の頂にある。この世においても、来世においても、テロリストが招いた子どもの血や痛みが赦されることは、ない。
■良かったこと■
(1) 一部のマスコミが「スラビャンスク市で本格的な反テロ作戦が始まった」と伝えたが、反テロ作戦幹部は訂正を行い、状況を明確にした。
29日のスラビャンスクではウクライナ軍のいかなる作戦も実施されておらず、市が包囲されていたのみ。「大規模な戦闘が絶えない」と目撃者の証言が語っていたのは、市内のテロリストの間で起きている縄張り争いのことである。
スラビャンスクを出られなくなったテロリストは、ガラス瓶に密閉された蜘蛛のように共食いを繰り返せばよい。一般市民さえ巻き込まれなければよいのである。
(2) M.コーヴァリ国防相によると、軍隊への資金確保において横領を働いた容疑で、ウクライナ国防省に属する一連の官僚が解任された。検察は捜査を始めている。
軍隊の清浄化は、歓迎してやまない。国防省をはじめ、ウクライナの官僚には腐敗した者が非常に多いのである。
ただやはり理解できないのは、国防省や軍事参謀本部が未だ、イエジェリ元国防相、サラマチン元国防相、レベデフ元国防相代行――ウクライナ軍隊を腐敗させてきたヤヌコヴィッチ政権時の国防省のトップ――の仲間でにぎわっている現状である。
これは特に、リソース配分や資金循環を司る官僚に当てはまる。4年にわたり軍隊を強盗してきた者が、政権が崩壊しただけで態度を改めると考えるのは、愚直ではないだろうか。
(3) 自称「ヴォストーク大隊」親ロシア武装集団が、自称「ドネツク人民共和国」が拠点を置くドネツク州行政庁舎を囲い、占拠した。(※「ヴォストーク大隊については「訳者コメント」をご参照。)
親ロシアと自称しながらチェチェン共和国にゆかりのある名称のヴォストーク大隊の方々は、「ドネツク人民共和国」の方々を逮捕し始めた。なんでも、人民共和国の方々が前日「メトロ」大型スーパーでチョコやビールを盗んでおきながら山分けしようとしなかったことが原因だとか。
今や、「メトロ」のチョコをおいしそうに貪るのはヴォストーク大隊の方々。ついでに、ドネツク州行政庁舎の周りにあったバリケードも解体してくださった。より強い相手が現れたときに脱出しやすくするためだろうか。

Photo: Chechen forces in Donetsk, Ukraine Investigation. http://ukraineinvestigation.com/wp-content/uploads/2014/05/Chechen-forces-in-Donetsk.jpg
※ 【訳者コメント】
ヴォストーク大隊について
5月9日からドネツク州で活動している親ロシア武装集団。ウクライナマスコミの情報では、ウクライナ特殊部隊「アルファ」「ベルクット」元部隊員を中心に、ロシアの国籍を持つ志願兵、またチェチェン共和国出身の志願兵からなっているという。ドンバスでは反テロ作戦軍を攻撃するなど明らかな親ロシア立場を見せているが、ドネツク人民共和国との関係は明らかでない。
「ヴォストーク大隊」(「ヴォストーク」はロシア語で「東」という意味)と制服や車両に綴っている集団だが、これはチェチェン戦争時に活躍していた親ロシアチェチェン人からなる大隊と同じ名称である。一部のマスコミは「チェチェン共和国からの特殊部隊」と確言しているが、同名の「ヴォストーク大隊」は2008年に解散しており、チェチェン共和国のカディロフ首相も関係を否定している。一方で、反テロ作成時の際に殺された大隊員の私物などからは、チェチェン系の「ヴォストーク大隊」に関係していることが示唆された。
「メトロ」大型スーパーについて
ドネツク空港の占拠排除作戦時に、その近辺にある「メトロ」大型スーパー(コストコ級)が害を受け防衛システムや窓などが壊れたが、周辺の住民や、戦闘に関わっていたドネツク人民共和国の武装者がその隙に一部の商品を掠奪した。29日に「ヴォストーク大隊」が「ドネツク人民共和国」の拠点を襲撃したのは、その掠奪が原因だったと言われている。 ※
(原文: ドミトロ・ティムチュック)
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「情報レジスト」のアーカイブ(4月2日~17日)はこちら。(Архив переводов ИС со 2-го апреля)
「ウクライナ情勢ーーよくある質問(ウクライナ人の視点で)」はこちら。(Мини-ликбез)
在日ウクライナ大使館、報道センター(声明およびコメント)HPはこちら。(Прес-центр посольства України в Японії)
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