※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を、要約し一部解説を加えたものです。※
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■ 悪かったこと ■
(1) ウクライナ東部では、行政施設の庁舎占拠が続いている。
ウクライナ内務省がきょう発表した報告によると、ドネツク州では15の庁舎が占拠されている。これにはあらゆる市町の自治体施設、警察庁、保安庁支部が含まれる。
また、ドネツク州ではテロリストらが好きなところで検問所を設け放題である。警察は「善良な市民の建設的な活動」を妨げないようにしている。スラビャンスク市だけ、治安機関の部隊が定期的に検問所の強制排除をするが、排除しては撤退を繰り返すため、テロリストらの検問所はすぐに再発する。意味不明なゲームである。
ルガンスク州ではこのシナリオが走り出したばかりのよう。前日ルガンスク市の行政庁舎占拠に続き、アルチェフスク市で一部の行政機関庁舎が占拠された。
(2) 政府は、反テロ作戦が失敗した責任を擦り付けられる犯人探しを続けている。
東部の警察が政府の妨害・反逆に走りがちであることが「明らかになった」前日に続き、今度は保安庁のアルファ特殊部隊が悪者にされそうである。なんでも、命令に逆らったことでアルファの幹部は既に解雇されているとか。
実際には、アルファ部隊は幹部の解雇はなかったことを明らかにしている。
「情報レジスト」の情報でも、アルファ部隊が服従しなかったような命令はそもそも出されていない。命令がやはりあったのであれは、誰がいつ出した命令なのか、明確にしていただきたい。そうして初めて、アルファ部隊の小心さや命令不服従の話ができるようになる。それまでは、魔女狩りにしか見えない。
その代わり、確実に出されている「いかなる状況でも急所を狙った射撃は禁止」という命令の背景を明らかにしてもらいたいものである。そのような制限の中で効果的に排除作戦を行うのは不可能に等しいというのに。
(3) ウクライナ国境付近でロシア軍の大規模な軍事演習が続いている。
「情報レジスト」の観察では、国境付近のロシア軍が増えてはいない。しかし、既にいる部隊だけでも、ルガンスク市かどこかで「住民投票」を「手助けする」必要が生じれば、十分である。
■ 良かったこと ■
(1) 国防省はきょう、国家国境および軍事的に重要な施設の防衛のために、一般市民から構成される防衛団形成について発表。
それと同時に、軍事経験がありウクライナの領土保安に貢献したい市民向けにホットラインが設けられた。警察・軍隊勤務経験があり、また公安保障隊に入りたい者は、+38 (044) 235-55-18まで電話すれば詳細を知ることができる。
とても良い試みである。以前も話したが、内戦という沼にはまりたくなければ、自警団などの形成はは国の治安機関の下でのみ行われるべきである。
問題は、これらの部隊がどのように利用されるか、である。既に行われた軍動員は悲惨な結果しか生み出していないことを考えると、心配せざるを得ない。
(2) パシンスキー大統領府長代行は、ドネツク州のスラビャンスク市における状況が近日中に一地方に制限され安定しそうであると述べた。
申し訳ないながら、筆者はパシンスキー氏の超能力を心の底から疑う。今の状況を客観視すれば、水晶玉で見たのでもない限り、安定したスラビャンスク市は想像できない。しかし、政府の代表がそのような発言をすること自体は、せめての安心感を与えてくれる。その予想が行動を伴うなら、ウクライナ政府をお称えしよう。
(3) ルガンスク市の状況は悲惨だが、ひとつ良いことがあった。
国家警備隊は、ルガンスク州の内務省総局占拠を阻止できた。きのう、分離主義者らが凶器を持って州営警察庁の襲撃を試み、国家警備隊員には武器を渡して施設を去るように要求したが、拒否された。
交渉の結果、兵役中の現役兵27名のみが施設を去り、幹部と契約兵は留まった。きょうも襲撃されることなく施設の防衛を務めている。
(by ドミトロ・ティムチュック)
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「情報レジスト」のアーカイブ(4月2日~17日)はこちら。(Архив переводов ИС со 2-го апреля)
「ウクライナ情勢ーーよくある質問(ウクライナ人の視点で)」はこちら。(Мини-ликбез)
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