突然ですが、本日をもちまして「情報レジスト」一日のまとめの和訳配信を終了させていただきます。(ティムチュック氏による原文の掲載は相変わらず続きます。)和訳のみでは伝えきれず多くの解説を要する内容が増えたこと、また訳者の個人事情などを考慮し、決断いたしました。
なお、不定期的ですが「情報レジスト」による分析の和訳を今後も掲載する場合もあります。
今までご愛読いただき、ありがとうございました。
原文はこちら:フェイスブック・情報レジストHP。7月14日の分はこちら。
和文: O.P.
意訳を中心にし、主に「評価」を担う内容と、広い文脈理解を要する内容は一部省略しました。(文ごとの省略は[…]で表示。)
※ 3月10日からウクライナで活動しているボランティア情報局、「情報レジスト」(”情報で抗議する”)リーダが発信しているその日の記録を和訳したものである。※ ======================================
■ 悪かったこと ■
(1) 停戦終了後反テロ作戦軍が見せてくれた前進は、効率の低い塹壕戦状態に代わってしまっている。
主な原因は、そのテロリストらを惨敗から守ろうと、ロシアがありったけの国際犯罪に手を出していること。ウクライナ領土へ重兵器を投入する(それも、以前は兵器のみだったのが、最近はクリューを乗せたケースが増えている)、ロシア領土から直接ウクライナの国境警備隊やウクライナ軍の陣地を砲撃するなどである。
この状況にもかかわらず未だ、遠回しな表現を捨て正式に、ロシアによる対ウクライナ戦争が起きていると、ウクライナが公言しようとしない理由が理解できない。この曖昧なスタンスは、非常識な状況をも招いているのである。
例えば本日、国家安保国防会議でなされた話。ドネツク州スニージネ町が空襲されたのだが、ウクライナ軍の航空隊が離陸していない。また、反テロ作戦本部は、テロリストらが戦闘機を入手したことは考えられないと主張している。
ここで問題。
空襲をしたのは誰だろうか。
安保国防会議が出した答えは「未確認航空機」。
しかし、反テロ作戦航空隊でもなければ武装勢力でもないとすれば、残る答えは明らかなのでは。ちなみに、11名もの民間人が巻き込まれて死亡している。
黒を黒と言い、戦争は戦争と確言するまでは、この馬鹿げた状況が続くだろう。
(2) 上記の続きともいえるが、フランスがロシアに提供するミストラル揚陸艦を巡る議論が続いている。パリの立場は、「ウクライナ・ロシアの二国間で何も起きていないのではないか、契約破棄をする理由がないのでは」というものである。
問題の本質は次の通り。ウクライナが紛争地域であるために、輸出倫理に反するとして、欧米がウクライナへ武器の提供が出来ない。一方で、事実上この戦争の頭脳であり稼働力であるロシアは、国際法からすれば何らの関係もないことになっているのである。
もし、ロシアがウクライナに対し戦争している事実を国際社会に求めさせることができれば、他国によるロシアへの軍備提供問題が自己解決するだろう。[ミストラルのような大型軍艦どころか]銃弾一つプーチンに売ることができなくなるのである。
(3) ロシアの一連の都市では、現地自治体が高給を餌に公式に傭兵を召募し、それらをウクライナへ見送る「送別式」を公に行っている。15日は、サマーラ市で行われた送別式について報道があった。
拍手とともにその若者をウクライナに見送った彼らが、お骨が戻ってきたときはどんな顔をするか、見てみたいものである。
[…]
■ 良かったこと ■
(1) 外務省は本日、翌日16日の欧州議会で、対ロシア追加制裁が議決されるだろうとの見解を述べた。
正直に言うと、さほど期待してはいない。しかし、「情報レジスト」の外交関係ソースによると、ここ一週間にわたり、多くの欧州外交官の発言はウクライナにとって好都合なものに変わってきている。明日になればようやく、ヨーロッパに向かって心から感謝の言葉を送れることを願おう。
(2) 先日撃墜された反テロ作戦航空機AN-26の搭乗員の内、4人は既に救出されている。武装勢力に捕えられた二人を含め、残りの搭乗員の無事を祈る。
ロシアのマスコミは今日、捕えられた一人が尋問されている動画を報道した。捕虜操縦士は、「私はウクライナに忠誠を誓いました。後になっても後悔しない、良心が許すことしかしません」と述べた。
ロシアのプロパガンディストがその動画を流した意図はわからない。「キエフのプロパガンダに洗脳されたウクライナの軍人」でも見せたかったのだろうか。結果として見えたのは、誓約に忠実な愛国家である。このような息子を持ったウクライナは、全世界から嫉妬されればよい。
(3) ドイツ・メルケル首相は、ウクライナ政府がテロリストらと直接交渉するように促してなどいない、誤解であると主張した。[…]
民主主義国家は好きである。先日、大勢のウクライナ人がメルケル首相のフェイスブックページに「Danke, Frau [von] Ribbentrop!」[リッベントロップ婦人、どーもありがとー]と書き込み、少しばかり苛立ちをぶつけてみると、すかさず反応してくれた。
後は言葉によるその反応に行動が伴い、プーチンを後押しすることがなくなればありがたい。現状では、本当にガスプロム社に魂を売ったのではと疑ってしまうのである。
ミストラル揚陸艦をロシアに提供したがるフランス大統領も同様。メルケル首相に次ぎ、きょうSNSで「ウクライナ人殺しを手伝ってくれてありがとう」などとイヤミの投稿が続いたが、自業自得である。
(原文: ドミトロ・ティムチュック)